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writer:戒月麗也さん&鳴神風汰さん
category : ZOIDS小説

夜・・・森の中は暗く静寂が流れていた。
この森の向こうの砂漠の方では赤い光と黒煙が浮かび上がり、その中にゾイドの残害があった。
その時、森の静寂を破るかのように、機械の軋む音がする・・・・・・ガシャガシャ。
すると、雲に隠れていた二つの赤い月が雲の微かな隙間から光をだした。
そこには、少年と黒のオーガノイドの姿があった。その少年は、少し不満そうな顔をしている。おそらくあの砂漠のゾイドの残害は、この少年がやったのだろう。
少し離れた場所にある虐殺竜「ジェノザウラー」を使って・・・・・・
この少年の名はレイヴン。オーガノイドはシャドーである。
「全く、あんな弱いゾイド共を相手にしてもストレスがたまるだけだ・・・・お前もそうだろうシャドー」
「グルルルル・・・・」
シャドーは低い唸り声で返事をする。レイヴンはその端整な顔に、口許だけの笑みを浮かべ、
「次の戦場ではあいつに会えるといいね。シャドー」
そうシャドーに言い放つと、レイヴンは歩き出した。
すると、漆黒の空から一粒の水が落ちてきた。その水はレイヴンの頬にある血の色をした刺青をつたい、地面に落ちた・・・・・
「雨か・・・・・」
レイヴンは、そう囁いて空を仰いだ。
早くジェノザウラーの所に戻ったほうがいいな、と思い少し小走りになる。そしてシャドーに声をかける。
「行くぞ!シャドっ・・・・!」
しかし、その言葉は最後まで続かず、レイヴンはそのまま冷たい地面に倒れ込んだ。
「!」
それを見てシャドーはびっくりし心配そうな声を出して自分の鼻で腕を突ついたり、頬を押したりする。
次の瞬間、雨が降り出した。シャドーはレイヴンを抱え雨がかからないように樹の下に寝かせた。そして風邪をひかないように、外套をかけてやる。
「グルルルル・・・・」
低い声で鳴きシャドーは走り去った。

◇◆◇

シャドーは少し走った後、小屋を見つけた。
その中には、バン達の姿があった。何やら皆で円になって話をしている。
「それで、急に小屋のドアが開いて雷が鳴り黒い陰が浮かんで・・・・・」
バンは、皆の前で恐い話をしていた。
ギィ・・・・・ドアが開いた。
「・・・・・・」×5
ゴロゴロゴロ・・・・雷が鳴り、次の瞬間ドアの所に黒い陰が浮かび上がった。
「うぁぁぁぁぁ!」
「なんだ!?」
「ちょっと、なんなのよあれ!?」
「おばけ・・・・」
「キュイィ!キュッィ?」
その陰はシャドーであった。
ムンベイは部屋の電気を付けた。
「シャっシャドーじゃないの!って事はレイヴンもいるんじぁって、あれ?レイヴンは?」
「まさか捨てられたとか?(笑)」
「バン!」
フィーネがバンの耳を引っぱる。
「いててっ、なんだよフィーネ冗談だって!」
「にしてもなんでこんな所にシャドーがいるんだ?」
シャドーはジークに近付く。
「グルルルルル・・・・」
「キュイッ!キュイィ」
ジークはシャドーの話を聞いて一緒に外へ出た。
「あっおい待てよジーク。どこ行くんだよ?」
そう叫んで、バンはジーク達を追う。
◇◆◇
そして、少し走った所の樹の下にジークとシャドーはいた。
「おいジーク。どうしたんだよ急に・・・・!」
バンは樹の下を見ると人が寝かされているのだ。
「レイヴン・・・・!?」
バンは苦しげに顔を顰めているレイヴンの額に手をやる。少し熱がある。
(このままにしとくとヤバいな・・・・・)
そう思いバンはジークを呼んだ。
「おいジーク。レイヴンを背中に乗せてやってくれ」
「キュイッ!」
そういってバンは、ジークの背中にレイヴンを乗せた。
シャドーはレイヴンに雨がかからないよう気遣い自分の漆黒の翼を広げレイヴンの上にかざした。

◇◆◇

小屋に戻ると、バンはムンベイに頼んで手当てをしてくれるよう頼んでびしょぬれになったジークとシャドーをふく。
「ムンベイ、レイヴンの様子はどうだ?」
「過労からくる貧血と風邪よ。見つかるのが遅かったら死んでたかもしれないわね。でもまぁこれだったら少しの間休めば治るわ」
「そうか、よかったなシャドー」
「グルルルル・・・・」
シャドーは少し安心したような鳴き声で言った。
「あっムンベイ、少しってどれくらい」
「んん~2,3日ってところかな?」
「ふーん、2,3日ねぇ」
「・・・・・おいっバン!お前まさかレイヴンを一緒に連れていく気じゃねぇだろうなぁ?」
「あたりまえだろ。病人をほっとけるかよ」
「病人でもそいつはレイヴンだぜ!」
「アーバインひどい・・・・」
「キュイィィ・・・・」
「うっ・・・・勝手にしろ!」
そう言ってアーバインは布団に入る。
「ハハッ、まぁまぁそんな事より2人とも早く寝なよ。明日早いんだからね」
「ハーーイ」×2
「キュイイィ」
そして、皆は布団に入り深い眠りについた。その中でシャドーだけはレイヴンの様子を一晩中見ていた。

◇◆◇

--小屋の窓から微かに光が差し込んできた。
眩しい。そう思いながらもレイヴンは目を覚ました。
「グルルルルル・・・・」
ひょっこりとシャドーは顔を出した。
「シャドー・・・・」
レイヴンはシャドーの顔を撫で、辺りを見回す。
「・・・・ここは?」
その時、
「おーい、シャドー、レイヴンの様子どうだ?・・・・って目ぇ覚めてんじゃん」
「バン・・・・」
意外な人物がいたのでレイヴンは少し驚いていた。
「過労による貧血と風邪だって、ムンベイが。全く、シャドーが俺達を見つけて呼ばなきゃおまえ死んでたかもしれねぇんだぞ」
「シャドー」
「グルルルルル」
シャドーは嬉しそうに返事をした。レイヴンは、バンの方を向き
「バン・・・・借りだとは思わないからな」
「別に俺も貸だとは思ってねぇよ」
その時、レイヴンは自分を助けたバンに少し疑問をいだいていた。なぜ敵である自分を助けるのかと・・・・・
「それにしてもお前、過労になるくらい戦ってたのか?」
「別に・・・・ただゾイドを破壊してただけだ・・・・」
「けど疲れるもんは疲れるんだろ」
「・・・・・・・」
無言になったレイヴンにバンは声をかける。
「レイヴン、少しの間一緒に行動してもらうぜ」
「なぜ!?」
「なぜって、お前まだ完全に体力が回復してるわけじゃないしほっといたらまた無理して、シャドーに心配かけんだろ」
「グルルルル・・・・」
「そんなの知った事か。僕はもう行くよ」
「ぜってぇーダメ!いいな絶対に一緒に行動するんだからな。いいな!!」
「・・・・・わかったよ」
バンの強情さ負けたのか、レイヴンはしょうがなく返事をした。
「あっそうそう、お前のゾイド、ジェノザウラーだっけ?盗賊とかに見つかんねぇようにシートかけて隠しておいたからな」
「あいつはそんなに大人しくないはずだけど・・・・・」
「あぁ、それならフィーネがお前の事をジェノザウラーに話したら大人しくしてくれたぜ。お前自分はゾイドが嫌いって言っても、ゾイドからは好かれてんだな」
(・・・・・自分が好かれている?ゾイドに?僕は嫌いなのに・・・・・ゾイドなんて・・・・ゾイドなんて・・・・目障りなだけなのに!)
「おーいバン~準備できたからレイヴン連れてきてー」
遠くからムンベイの声がする。
「わかったぁー」
大きな声でバンは返事を返した。
「行こうぜ、レイヴン。きっと皆待ってるぜ」
「・・・・あぁ。行くぞ、シャドー」
まだ少し足がふらついているレイヴンはシャドーの体を支えにして歩き出す。
「グルルルルル」
大丈夫か?と言いたそうにシャドーは唸り声を出す。
「大丈夫だよシャドー。僕もそこまでやわじゃないさ」
そう言いながらレイヴンは、ふらつきながらもジェノザウラーの元まで歩いた。

◇◆◇

レイヴンがジェノザウラーに乗ろうとすると、
「おい、レイヴンお前寝なくて大丈夫なのか?」
「・・・・そこまで、心配しなくてもいいよ」
「じゃぁさ、グスタフの後部座席に乗りなよ。そこなら横になれるからさ」
「あっ!じゃぁ俺ブレードライガーに乗るよ」
そう言ってバンは、ブレードライガーに乗り込みジェノザウラーはトレーラーに乗せられシートをかけられた。シャドーはジークと一緒にグスタフの頭の上で丸くなっていた。レイヴンは後部座席で横になる。
「ジェノザウラーね・・・・貴男の事心配してたわよ。早く良くなってほしいって」
後部座席の前に乗っているフィーネが急に話しかけてきた。
バンと同じような事を言うフィーネにレイヴンは少し動揺していた。
(自分がゾイドに心配されている?そんな莫迦みたいな事があるわけがない・・・・あるわけが・・・・)
だが現に、ジェノザウラーはレイヴン以外の人間の言う事を聞いてグスタフのトレーラーで大人しくシートをかぶっている。普段ジェノザウラーはレイヴン以外の人間の言う事は聞かないのだ。
それで聞いたという事は、よほどレイヴンの事を心配していたのだろう。するとムンベイが、
「レイヴン、あんたさぁ少しは戦いをやめてたまには他の事を考えたらどうなんだい?」
「別に僕は戦い以外の事に興味はないね・・・・・それにそんな事、貴女に言われる覚えはないよ」
レイヴンはムンベイに冷たく接した。
優しくされてもそんな感情を知らないレイヴンには無駄な言葉でしかなかったのだ。ましてや自分の敵である奴等に心配されるだけでも反吐が出るそんな感じであった。
「ハハ・・・・まぁそんな事言わないで、あんただって子供なんだからあんまり無茶しちゃダメだよ」
「・・・・ふんっ」
そのあと、しばらくの沈黙が流れた・・・・

◇◆◇

ビーーーーーーーー
グスタフのレーダーに反応があった。
『バン、アーバインどうしたの!』
『わからねぇ!ともかく3体のゾイドがこっちに向ってる事は確かだ!』
『よーし、いくぜ!ジーク』
「キュイイィ!」
ジークはブレードライガーと合体した。
近付いてきたゾイドはモルガ、レドラー、ステルスバイパーだった。すると、急にレイヴンはグスタフのコックピットを開き外へ出た。
「あっちょっと!!レイヴン!?」
しかし、その言葉はレイヴンには届かずレイヴンは走り去っていった。その先には、ジェノザウラーがあり、レイヴンはジェノザウラーのシートを取りコックピットに乗り込んだ。
「シャドォォー!!」
レイヴンがそう叫ぶとシャドーはジェノザウラーに合体し、グスタフのトレーラーから飛び立った。
「あぁ~!!もう、なんなのよぉー!」
「クス・・・・もう大丈夫みたい」
「えっ?何がよ、フィーネ」
「んっ?レイヴンの事・・・・」
「・・・なんでレイヴンが大丈夫なのよ」
「え?だってあれだけ動ければもう大丈夫でしょ・・・」

◇◆◇

その頃、バン達は3体のゾイドにてこずっていた。
『だぁ~!なんだよこいつら!スリーパーのわりに強ぇぞ』
『バン!ぐだぐだ言ってる暇があったらとっとと攻撃しろ!』
『わかってるよ!』
しかし、バンがアーバインと話している隙に背後からステルスバイパーが襲って来た。
『バン!あぶねぇー!』
『うぁぁぁぁー!!』
--ズガァ-ン
急に、鈍い音が響いた。バンが後ろを向くとステルスバイパーの残害があった。何かで撃たれたらしい。
「・・・・・荷電粒子砲?」
バンは、ある方向を向いた。
そこにはジェノザウラーがあり荷電粒子砲を撃ったあとであった。  
『レイヴン!!お前もう体大丈夫なのか?』
『バン!そんな事ぐだぐだ言ってるからそんな雑魚にやられるんだ』
『なっ!なんだとぉー!!人が心配してやってんのに!』
『うるさい!誰が心配してくれって頼んだ!そんな事言ってないでとっととそこにいるモルガでも倒してなよ』
『わかったよ!・・・・でもレドラーどうすんだ?』
バンが、そう言うとレイヴンはジェノザウラーを飛ばしてレドラーの元へ行った。
『ふんっ!あの程度の雑魚僕が倒してやるよ!』
それを聞いてバンは、少し安心した。
「よーし!ジーク行こうぜ」

◇◆◇

だが、バンは小10分ほどモルガと交戦していた。
「ジーク!ブレードアッタクだぁー!!」
「キュイィー!」
次の瞬間ブレードライガーはブレードを展開し、ブースターをオンにして、モルガを切り裂いた。
「よっしゃー!いっちょあがりぃー☆やったなジーク」
「キュイィ~!!」
バンが喜んでいると、レイヴンが冷たい一言を言い放つ。
『何そんな雑魚相手に勝って喜んでんの?あとたった一匹の雑魚スリーパー相手に時間かかりすぎ・・・・君、弱いよ』
バンが横を向くと、そこにはジェノザウラーの姿があった。
『うっ・・・・レイヴン、相変わらずきつい一言を・・・・』
『なんだよ、弱い奴に弱いって言って何が悪い』
バンはレイヴンにきつい一言をさらりと言われたので、少し心に傷が付いた。
『レイヴン・・・・お前もう少し愛想よくしろよ』
『うるさい!そんな事関係ないだろ!ともかく今度君が僕に会った時は・・・・』
『・・・・会った時はなんだよ?』
レイヴンはまた端整な顔に口許だけの笑みを浮かべ言い放つ。
『ふん・・・・今度こそ君を倒してやるよ』
そしてレイヴンはその場を去った。
そのあと少しの間だけ静寂が流れた。
「なぁ・・・・ジーク、あいつの倒すって少し殺すっていう意味も混ざってるような気がしないか?」
「キュィィィ・・・・」
バンは少しの間ジークと話し合った。

◇◆◇

「グルルルル・・・・」
「ん?何だよシャドー」
「グルルルルルル」
「何故あの場でバンを殺らなかったって・・・・いいじゃないか別に、助けてもらったお礼だよ。ただほんの少し生きる時間を延ばしてやっただけさ」
--そのあと、レイヴンはまた次の戦場へ向った。

                          END